お葬儀の豆知識
菩提寺とは?檀那寺との違い?ない・わからない時は?沖縄の人が葬儀で配慮することは?
・菩提寺とは?檀那寺とは違うの?
・沖縄で菩提寺に馴染みがないのはなぜ?
・沖縄の人が菩提寺について配慮することは?
沖縄では馴染みのない菩提寺ですが、配偶者の実家など、本州に住む親族の法事でしばしば聞く言葉が「菩提寺」や「檀那寺」です。
独自の祖霊信仰が根付く沖縄では「菩提寺」と言われても馴染みがないですよね。
本記事では、本州の弔事で理解が進む、「菩提寺」や檀那寺、檀家制度について解説します。
菩提寺とは?
◇「菩提寺」とは、先祖代々のお墓が建つ寺院です
沖縄では個人が所有する「個人墓地」にお墓を建てる風習が昔からありましたが、全国的には江戸時代の昔から、お墓は寺院墓地と呼ばれる寺院が管理する墓地に建ててきました。
「菩提寺(ぼだいじ)」とは、先祖代々墓が建つ寺院墓地を管理する寺院です。
「菩提寺」の「菩提(ぼだい)」とは死後の冥福を意味します。
・先祖代々墓が建つ寺院
・その家の葬儀や法要を全て担当する
・毎年お布施を献上する
先祖代々、家で菩提寺に帰依しご先祖様の冥福を祈るため、家の葬儀や法事に関する一切を、菩提寺の宗旨宗派に倣います。
葬儀の案内で「仏式○○宗」など、宗派が記載されているのはそのためです。
・訃報と葬儀の案内とは、違うの?一般葬・家族葬で知らせるタイミングや手段、内容も解説
菩提寺と檀那寺は違う?
◇「檀那寺」は、一家が「檀家」として経済的な支援を行う寺院です
菩提寺には先祖代々墓が建ち、家のご先祖様が供養されていますが、檀那寺は家で代々寺院やその仏教宗派に帰依する「檀家(だんか)」でありながら、先祖代々墓があるとは限りません。
<菩提寺と檀那寺の違いとは?> | |
[菩提寺] | ●寺院の仏教宗派に帰依する ・先祖代々墓がある ・先祖の位牌が納めてある ・ご先祖様を供養している |
[檀那寺] | ●お布施により寺院を支える ・個人墓が建つこともある ・経済的に寺院を支える |
ただし寺院墓地にお墓を建てる際、その寺院の檀家となり、毎年お布施を支払うため、実質的には菩提寺でも檀那寺でも、現代の関係性に変わりはないでしょう。
例えば、もともとは先祖代々墓が建っていたものの、住まいや継承者の問題からお墓を閉じた家などです。
では「檀家」と「信徒」がどう違うかと言えば、寺院や人により見解は分かれます。
ただ個人(信徒)と家(檀家)、お墓がない場合(信徒)とお墓がある場合(檀家)などの見解があるでしょう。
…神様や仏様、寺院や僧侶の力などを深く信仰し、教えに従い威徳を仰ぐことを差します。
「檀家制度」とは?
◇「檀家制度」とは、家が寺院に属して財政を支える制度です
「檀家制度(だんかせいど)」では、一家が代々地域や集落の寺院に属して、家の葬儀や法要など、供養の一切を任せる代わりに、寺院にお布施をして経済的に支えます。
<檀家制度とは> | |
[檀家] | ・先祖代々墓が建つ ・葬儀や法要を依頼する ・寺院を経済的に支える (お布施を毎年払う) |
[檀那寺(菩提寺)] | ・ご先祖様の供養をする ・葬儀や法要を請け負う ・お墓の管理をする(公共部分) |
菩提寺はお墓の管理を行いますが、そのお世話の範囲は寺院により異なります。
毎日お墓にお水を供えるご住職もいれば、公共部分のみ、提携管理会社による清掃を行う大きな寺院墓地もあるでしょう。
菩提寺があることで法事法要の相談ができ、供養の一切を担ってくれる点はメリットですが、菩提寺の仏教宗派に帰依し、ルールに倣う必要がある点は、デメリットと捉える人もいるでしょう。
民間霊園と寺院墓地は違う
◇寺院墓地は寺院が運営しますが、民間霊園は民間企業が運営します
ここまでお伝えすると、個人が所有する個人墓地にお墓が建つ沖縄では、霊園や墓地はみな寺院墓地であると勘違いも起きやすいです。
今後個人墓地に建つお墓を閉じて、霊園や墓地に引っ越す「改葬(かいそう)」を行う際、「特定の仏教宗派に帰依するのは抵抗がある」と言う人もいるでしょう。
ただし霊園には宗旨宗派を問わない民間霊園もあります。
<民間霊園と寺院墓地は違う> | |
[寺院墓地] | ・寺院が運営する ・お墓を建てると檀家になる (寺院の宗旨宗派に帰依する) ・お布施を毎年支払う |
[民間霊園] | ・民間企業が運営する ・お墓を建てるのみ (宗旨宗派は問わない) ・年間管理料を毎年支払う |
この他にも自治体が運営する公営墓地があります。
公営墓地はコストが安く収まるものの、応募条件や倍率の高い抽選があるなど、不便な側面もあるでしょう。
それぞれメリット・デメリットを加味して、適した墓地を検討してください。
沖縄で菩提寺に馴染みがないのはなぜ?
◇沖縄では独自の祖霊信仰があるためです
全国で檀家制度が始まった期限は、江戸時代の「寺請制度(てらうけせいど)」となり、沖縄はこの時代、琉球王朝を築いていました。
琉球王朝は独自の王朝であるため、当然江戸時代の寺請制度には倣っていません。
そこで沖縄では独自の祖霊信仰が根付いてきたのです。
<檀家制度の由来:寺請制度とは?> | |
[目的] | ・キリシタンの規制 ・寺院がキリシタンではない証明をする |
[方法] | ・全ての人が寺院の檀家になる ・寺院から「寺請証文」が発行される |
寺院による「寺請証文(てらうけしょうもん)」は、現代の戸籍と同じ役割であり、身分証として人々は所持しなければなりません。
そこで強制的に檀家制度が根付いたことが、由来です。
現代の沖縄での影響は?
◇現代は沖縄でも、葬儀や法事は仏式が主流です
昔の沖縄では独自の祖霊信仰の元、家付きのユタやノロが宗教者となって、儀礼を行ってきましたが、現代は全国と同じように仏式による葬儀や法事が根付いています。
そのため菩提寺や檀那寺はないものの、葬儀や法事では僧侶をお呼びして、読経供養を行うことになるでしょう。
<菩提寺がない場合は?> | |
[僧侶の手配] | ・葬儀社に相談 ・納骨先に相談 ・仏壇仏具店に相談 ・ネットによる僧侶手配 ・近隣の寺院に依頼 |
…などの方法があります。
家族が亡くなった時、葬儀で読経供養を依頼する時には、一般的に葬儀社に相談して僧侶を手配することが多いでしょう。
昔の沖縄では、近隣の寺院へ家族が伺い、読経供養の相談をしてきました。
また祖霊信仰が基本に根付いているため、僧侶に読経供養を依頼しても、仏壇の配置やお墓の形を変えることもありません。
沖縄の人が菩提寺に配慮することは?
◇本州の親族の葬儀では、先方の宗旨宗派に倣います
独自の祖霊信仰が根付き、檀家制度に馴染みが薄い沖縄ですが、配偶者の実家など、本州で仏式による、親族の葬儀に参列することになったら、先方の宗派を確認しましょう。
<沖縄の人が配慮すること> | |
[数珠の持参] | ・宗派で違う ・簡易数珠だと共通 |
[焼香の仕方] | ・宗派で違う (お線香も違う) |
[香典の表書き] | ・宗派により変わる (特に浄土真宗) |
[お悔やみの言葉] | ・宗派により変わる (特に浄土真宗) |
訃報ハガキには、多くが葬儀形式として「仏式浄土宗」など、宗派を記載しているので、確認はしやすいです。
また、そもそも仏式の葬儀ではなく、キリスト教式や神式(神道)の葬儀もあるので、確認をしておくと、マナーも先方に倣うことができて丁寧です。
宗派によるお焼香の仕方や香典の表書き、お悔みの言葉について、下記をご参照ください。
・【沖縄の葬儀マナー】宗派で違うお焼香の仕方とは。押さえる3つのポイント
・沖縄の葬儀で、御香典を包むマナーとは?表書きや連名での作法まで解説!
・お悔みの言葉とは?メールや香典とともに添える言葉の例文。一筆箋、手紙での例文も紹介
まとめ:菩提寺とは先祖代々墓が建つ寺院です
本州で聞く「菩提寺(ぼだいじ)」とは、解釈が違う人や地域もありますが、主に先祖代々墓が建つ寺院です。
先祖代々墓は家族が代々入るお墓で、入る範囲は異なりますが、沖縄の門中墓(むんちゅうばか)と同じ役割となるでしょう。
ただ全国的にお墓の継承者問題や維持管理の負担などから、墓じまいをして菩提寺から抜ける「離檀(りだん)」の流れも産まれています。
祖霊信仰が根付く沖縄以上に、仏教の宗派や宗派による違いを意識する人も多いため、全国的な葬儀に参列する際には、まず葬儀の形式や宗派を確認すると良いでしょう。