葬儀を準備するとき、最初に決めるべきなのが「喪主」と「施主」です。しかし、いざ身近な人を亡くしたとき、「誰が喪主になるべきか」「施主とはどう違うのか」と迷う人が少なくありません。

特に現代は家族構成や葬儀の形式が多様化しており、近年は家族構成や生活環境が変化し、従来のように自動的に決まるとは限らなくなりました。本記事では、喪主と施主の選び方、判断の基準、実際に行うべき準備と仕事を整理して解説します。

喪主と施主の決め方にルールはある？

◇まず押さえておきたい基本

まず押さえておきたいのは、喪主・施主に法律上の決まりは存在しないということです。選び方は地域や家族ごとの事情で異なり、「誰が葬儀を取り仕切るのが最も自然か」を基準に決めて構いません。

ただし、親族間の調整がうまくいかないとトラブルになりやすいため、事前に話し合っておくことが重要です。喪主は一般的に、故人と最も近い関係にある人が務めます。配偶者が存命であれば配偶者が第一候補となり、続いて子ども、親、兄弟姉妹の順に選ばれるのが通例です。

一方で施主は、葬儀費用を負担する人・実務を取りまとめる人を指します。喪主と同一人物であることも多いですが、分担しても問題ありません。

喪主の選び方｜血縁と責任のバランスで決める

◇喪主に求められる資質とは？

喪主は葬儀全体の「顔」となる存在です。僧侶への挨拶や参列者へのお礼、式の締めの言葉など、精神的にも大きな役割を果たします。そのため、血縁の近さだけでなく、落ち着いて人前に立てるか、責任を持てるかといった要素も大切です。

配偶者が高齢であったり体調を崩している場合は、子どもが代わりに喪主を務めても構いません。また、家族葬では兄弟姉妹や甥姪が喪主となるケースもあり、「故人に代わって感謝を伝えられる人」であれば血縁を問わない柔軟さが認められます。葬儀社は多くの事例を知っているため、候補者が複数いる場合は参考意見として相談すると判断の助けになります。

施主の選び方｜実務と費用を管理する裏方

◇「裏方の司令塔」としての役割

施主は、葬儀社との契約・支払い、香典返しの準備や法要の段取りなど、葬儀に関する実務全般を担うことが多い立場です。実際に費用を負担する立場でもあるため、経済的・実務的に信頼できる人が選ばれます。喪主と施主が同一人物の場合、両方の責任を背負うことになるため、周囲が支援体制を整えることが大切です。

施主は葬儀社の担当者と最も密接に関わるため、日程調整や見積もり確認、火葬場の手配などをスムーズに進める力が求められます。また、僧侶へのお布施や世話役へのお礼など、金銭の扱いも発生します。領収書の保管や支出の整理をきちんと行うことが信頼につながります。

判断に迷ったときの4つの基準

◇客観的に選ぶためのポイント

喪主・施主を決める際は、以下の4点を基準にするとわかりやすいです。

これらを踏まえ、家族が納得できる形で役割を決定することが、葬儀を滞りなく進める第一歩です。

喪主と施主のやることチェックリスト

◇時系列で見る役割の違い

喪主が「表の代表」、施主が「裏方のまとめ役」という意識で役割を分けると、役割の重複や抜け漏れが防げ、葬儀全体の進行がよりスムーズになります。

トラブルを防ぐために

◇誤解や負担を避けるための工夫

葬儀で起こりがちなトラブルの多くは「役割の曖昧さ」から生まれます。事前に「喪主＝挨拶と代表」「施主＝費用と実務」と明確化しておくことで、責任の所在がはっきりします。また、支払い記録を共有する、親族に逐一報告するなど、オープンな姿勢を保つことも信頼関係の鍵です。

もし意見が分かれた場合は、中立的な立場の第三者として葬儀社に調整役を依頼するのも有効です。プロの視点で調整してもらうことで、家族内の負担や誤解を軽減できます。

まとめ：分担と協力が円滑な葬儀の鍵

喪主と施主は、葬儀を支える両輪です。喪主は遺族を代表し、故人に代わって参列者へ感謝を伝える「心の役割」です。施主は実務を支え、滞りなく式を進める「運営の役割」をします。

どちらが上ということはなく、協力して初めて葬儀が成り立つといえます。現代の葬儀では、家族の距離感や生活事情に合わせて柔軟に役割を決めることが自然です。「誰が喪主・施主か」よりも、「どうすれば皆で支え合えるか」を考える姿勢が、故人への最大の敬意となります。準備の段階から家族全員で役割を共有し、感謝と連携を大切にすることが、家族が納得できる、落ち着いた葬儀を行うための第一歩です。