お葬儀の豆知識
沖縄の納骨式ならではの5つのしきたりとは?沖縄と本州で違うお供え物は?
琉球王朝と言う独自の歴史を歩んできた沖縄では、納骨式も独自のしきたりがありますよね。
そもそも沖縄のお墓は本州のお墓とは違う個性があり、「温かい大きなお墓」と例える人も多いでしょう。
・沖縄の納骨式5つのしきたりとは?
・本州と沖縄の納骨式、しきたりの違いは?
・遺族が進める納骨式の準備は?
・沖縄の納骨式、当日の流れは?
今回は、沖縄ならではの納骨式5つのしきたりを、準備をするお供え物も含めてお伝えします。
沖縄の納骨式ならではの5つのしきたり
沖縄ならではの納骨式のしきたりは、そもそも風葬の歴史によるものも多いでしょう。
そのため法律で火葬が義務付けられた後は、自然となくなった沖縄の納骨式のしきたりもありました。
そのなかでも下記5つの沖縄の納骨式のしきたりは、沖縄ならではのお墓の造りなどから、今も多く見受けるものです。
①納骨式は葬儀当日
②最初に拝む「ヒジャイガミ」とは?
③相の合う人が、お墓を開ける
④新霊の安置場所「シルヒラシ」とは?
⑤沖縄の納骨式でのお供え物とは?
ただし、近年では若い人々や本州からの移住者が多い那覇市など都心部を中心にして、本州式の納骨式を行う家も増えました。
①納骨式は葬儀当日
●沖縄では葬儀当日の納骨式が、昔ながらのしきたりでした
沖縄で葬儀当日に納骨式を行うしきたりができた理由は、その昔の沖縄では風葬を行ってきたためです。
戦後の1948年(昭和23年)5月31日、法律第48号により火葬が義務付けられて以降も、風葬時代の名残りから、葬儀当日に納骨式を行う風習はあったものの、最近では遺骨を四十九日まで自宅安置する選択も増えました。
[1]門中墓などお墓がある…葬儀当日が多い
[2]新しくお墓を建てる…四十九日やイヌイ(一年忌)が多い
[3]納骨堂や合祀墓など…四十九日が多い
…現代の沖縄では、一般的に以上の傾向があります。
いずれにしても僧侶をお呼びして読経供養を行う家が多いため、葬儀や四十九日など、スーコー(焼香=法要)とともに行う家が多いでしょう。
②最初に拝む「ヒジャイガミ」とは?
●「ヒジャイガミ(左神)」とは、墓地を守る土地神様です
沖縄のお墓の左側、向かって右側に鎮座される神様が「ヒジャイガミ(左神)」で、沖縄の納骨式では、最初に拝むしきたりがあります。
・お墓に着いたら、最初に拝む
・お墓の左側(向かって右側)
そのため沖縄のお墓参りでは、①ヒジャイガミ→②墓前へと2か所への拝みが必要です。
お供え物も供えるため、ヒジャイガミへ供えるために取り出したおかずを補充するため、タッパーに余分なおかずを用意して出掛けてください。
※この補充のためのおかずを、「ウチジヘイシ」と言います。
ヒジャイガミへのお供え物については、詳しく後述しますので、こちらをご参照ください。
③相の合う人が、お墓を開ける
●沖縄の納骨のしきたりでは、故人と「相の合う」人がお墓を開けます
沖縄での納骨式のしきたりで「相の合う人」とは、一般的に故人の干支と同じ生まれの人、亥年・戌年などと言われますが、実は地域によって「相の合う人」は大きく違うため注意をしてください。
・故人と同じ干支
・亥年、戌年の人
・故人の干支との関係性で「フミ」の人(名護市久志)
・故人の干支の180度方向の干支(糸満市)
・故人の干支から続く4つの干支(読谷村)
このように同じ沖縄でも地域によってかなり違います。
ただカロートが地上にある沖縄のお墓であっても、重い墓石を一般の人が動かすことは危険ですので、相の合う人はお墓を開ける代わりに周辺の草を3回抜く、お墓の扉を3回叩くなどの儀礼で済ませることが多いでしょう。
④新霊の安置場所「シルヒラシ」とは?
●「シルヒラシ」とは、遺骨を納めるカロートの入口近くです
ご先祖様のなかで最も新しい故人である新霊(ミーサー)は、入口近くのシルヒラシに納められ、お墓を守るウジョーバン(お墓の番人)の役割を果たします。
納める人は、沖縄の厄除けの呪具「サン」を手に持ち、納めた後は←ご先祖様へお尻を向けないよう後ずさりするようにお墓から出るのが、沖縄ならではの納骨のしきたりです。
⑤沖縄の納骨式でのお供え物とは?
●沖縄の納骨式でのお供え物は、重箱料理がメインです
沖縄のお墓参り行事、シーミー(清明祭)や旧盆などと同じく、沖縄の納骨式では重箱料理を供えます。
ただし沖縄の納骨式では、ヒジャイガミへもお供え物を用意するので、後程ヒジャイガミと墓前、それぞれのお供え物を供えてください。
ただ現代の沖縄では屋内施設の納骨堂や樹木葬などもあるため、霊園に倣いお供え物を用意する家、本州の風習に倣う家も多いです。
●仮位牌
・供え花…1対(2束)
・海のもの…わかめなど
・山のもの…野菜など
・果物…りんご・みかんなど
・お酒
・おもち…丸餅など
・お線香…束線香
・塩
本州の風習に倣う場合は、宗派や地域により変わるので一概には言えませんが、ひとつの参考にしてください。
また故人が生前に好きだったものを用意して供える家もあります。
ヒジャイガミへのお供え物
●ヒジャイガミへはシルカビを供え、重箱料理は「カタシー(片方)」です
ヒジャイガミはご先祖様ではなく神様なので、ウチカビではなくシルカビ(半紙など)を供える点が、墓前との大きな違いでしょう。
「シルカビ」は、神様へ渡す「神様への税金」とされてきました。
また「カタシー(片方)」とは、おかず重とおもち重を1重ずつです。
(1)重箱料理、カタシー(片方)
・もち重1重…弔事用の白もちのみ奇数個
・おかず重1重…弔事用の奇数品目
(2)シルカビ
・3枚重ねの半紙など、白い紙
(3)お酒
・徳利とおちょこ
(4)お線香
・ジュウニフンウコー(12本)
※ヒラウコー(沖縄線香)ならタヒラ(2枚)
ヒジャイガミへ拝んだ後は、重箱料理からおかずを1品~2品ずつお皿に取り分けます。
そこで重箱料理の間部分は、予め持参した「ウチジヘイシ」から補充して、墓前への拝みに備えてください。
墓前へのお供え物
●墓前へは、果物やお菓子、重箱料理「チュクン(両方)」を供えます
昔ながらの沖縄の納骨式のしきたりでは、墓前へ供えるお供え物の上にウチカビを置いて供えます。
「ウチカビ」とは、沖縄ではスーパーなどでも販売されているオレンジの紙で、故人があの世で使用するお金だと言われてきました。
●シルイフェー(仮位牌)
(1)重箱料理、チュクン(両方)
・もち重2重
・おかず重2重
※ヒジャイガミへの拝みの後、ウチジヘイシで補充する
(2)ウチカビ…重箱料理の上へ置く
・施主…5枚
・その他…3枚/1人
(3)お酒類
・お酒
・水
・お茶
(4)果物とお菓子の盛り合わせ(弔事用)
・果物(りんご、みかん、バナナなど)
・お菓子(白が基調の弔事用菓子)
(5)お線香
・ジュウニフンウコー(12本)
※ヒラウコー(沖縄線香)ならタヒラ(2枚)
ただし現代沖縄の納骨式のしきたりでは、その規模によってカタシー(もち重とおかず重、それぞれ1重ずつ)を供える家も多いでしょう。
納骨式ではウチカビを焚くので、水やネギを入れた金蔵ボウルなどの「カビバーチ(火鉢)」を準備します。
※お墓の右側にウチカビを焚く「カビアンジ」がある場合には、必要ありません。
最後に
今回は、沖縄ならではの納骨式のしきたりを5つ、本州と沖縄で違う納骨式のお供え物とともに解説しました。
この他、昔ながらの沖縄の納骨式のしきたりには、お墓まで遺族がシルイフェー(仮位牌)や遺骨を手に、行列をなしてお墓へ向かう「野辺送り(のべおくり)」や、黒傘を遺骨に差しかける「天蓋(てんがい)」などもあります。
また昔ながらの沖縄では、納骨式のしきたりとして、翌日から七日間にわたりお墓参りへ行くものもありました。
けれども現代はで、バス移動や火葬の義務化などにより、現代も残る沖縄ならではの納骨式のしきたりは、本文中でお伝えした5つほどになっています。
・沖縄で納骨式までに施主が行う5つの準備とは?いつ・どこで行うのが良い?
まとめ
沖縄ならではの納骨式、5つのしきたりとは?
●沖縄の納骨式5つのしきたり
・納骨式は葬儀当日
・墓地の神様「ヒジャイガミ」へ最初に拝む
・相の合う人が、お墓を開ける
・新霊はお墓の入口「シルヒラシ」に置く
・沖縄の納骨式でのお供え物は重箱料理がメイン●沖縄の納骨式でのお供え物
①ヒジャイガミ
・重箱料理…カタシー(片方)
・シルカビ
・お酒
・お線香…ジュウニフンウコー(12本)
※ウチジヘイシで補充②墓前
●シルイフェー(仮位牌)
・重箱料理…チュクン(両方)
・ウチカビ…重箱料理の上へ置く
・お酒
・水
・お茶
・果物(りんご、みかん、バナナなど)
・お菓子
・お線香…ジュウニフンウコー(12本)